ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
京都大学ヒト行動進化研究センターの大石高生准教授、徳島大学大学院薬学研究科の篠田知果博士前期課程学生(当時)、同大伊藤孝司名誉教授、川崎医科大学の北風圭介助教らの研究グループは、農研機構、国立医薬品食品衛生研究所、伏見製薬所、金沢大学、兵庫県立大学、自然科学研究機構、岐阜大学、神戸薬科大学との共同研究により、遺伝子組換えカイコで産生したヒトライソゾーム酵素のN型糖鎖をエンドグリコシダーゼにより改変し、ムコ多糖症Ⅰ型ニホンザルの臨床徴候を改善することに成功した。この研究成果はライソゾーム病に対する高機能型の治療用酵素の開発に繋がることが期待される。
ライソゾーム病はライソゾーム酵素の遺伝的欠損を原因とする疾患群。一部のライソゾーム病に対しては、哺乳類細胞株で産生した組換えヒト酵素を静脈内投与する酵素補充療法が臨床応用されてるが、組換えライソゾーム酵素を大量に生産する必要があるため、より低コストかつ安全な生産系が求められている。
同研究グループは遺伝子組換えカイコ発現系を用い、カイコ繭から組換えヒトIDUAを大量に抽出・精製することに成功。精製IDUA にはライソゾーム酵素の細胞内取り込みに必要なマンノース6-リン酸(M6P)含有N 型糖鎖は含まれていなかったことから、エンドグリコシダーゼを用いてN 型糖鎖を改変したM6P型IDUA(M6P-IDUA)を調製した。
また、近年ムコ多糖症VII型の治療用酵素であるベストロニダーゼ・アルファでは、酵素に付加されたシアル酸含有N 型糖鎖が細胞内取り込みや薬物動態を改善することが示唆されていることから、シアル酸型IDUA(SG-IDUA)も調製した。
一方、京都大学ヒト行動進化研究センターで集団継代飼育されているニホンザル群の中から、軽症/中間型MPS Iの臨床徴候を示す個体を発見し、IDUA遺伝子のミスセンス変異(一塩基変異)を同定。さらに、MPS IニホンザルにM6P-IDUAあるいはSG-IDUA を静脈内投与することで、尿中GAG を減少させ、臨床徴候を改善させることに成功した。
以上から、遺伝子組換えカイコとエンドグリコシダーゼの組み合わせは、機能的なN型糖鎖を有するデザイナー糖タンパク質(ネオグライコ酵素)を生産するための有望なアプローチであると考えられる。
エンドグリコシダーゼ処理はコストパフォーマンス面の改善が必要となることから、今後は遺伝子組換えカイコに哺乳類型糖転移酵素遺伝子群を導入することでN 型糖鎖構造をヒト型化し、低コストでのヒト糖タンパク質製造プラットフォームを構築をめざす。
また、MPS Iニホンザルはヒトと共通した原因・症状・治療法の条件を満たす疾患モデルと考えられることから、遺伝子治療法などの開発研究にも応用する。
同成果は4月18日、国際学術誌『Communications Medicine』にオンライン掲載された。
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